ぽーと会メンバーの子供たちの中で、アート専攻希望者が何人かいます。
しかし、私たちは親はまず「貧乏画家」のイメージを描き、もっとお金になる、実用的なものを勉強してほしいと反対してしまうことが多いと思います。又、通常の大学受験の準備に加え、大学に提出するポートフォリオ製作といったことも、親と子両方にとって全く未知の世界で、心理的にも経済的にも大きな負担です。
しかし、キャリアの将来性への不安、受験準備の煩雑さなどが理由で、子供のやりたい夢を簡単に捨てさせてもいいものでしょうか?
息子の教育コンサルタントの先生は、「アートと一口に言っても、将来のキャリアは画家以外にも、建築、舞台芸術、工業デザインなど色々あるので、親の思い込みで諦めさせてはいけません。総合大学でダブルメジャーとしてアートを学ぶ道もあるので、きちんと戦略を立てれば、アートとキャリアは両立します。」とおっしゃっています。
というわけで、ぽーと会スピンオフ(分科会)の記念すべき第一弾として「アートメジャー」について教えて頂きました。講師は、お嬢さんがUCの中でもユニークな学部の中のアートで学んでいらっしゃる方にお願いしました。
1.高校でのアート科目の履修と大学受験のための準備
● 高校で学べる科目
1年目 Drawing and Design Painting Sculpture
2年目 Imaging AP Art 2-D design
3年目 AP 3-D design AP Art History
4年目 Conservatory Design Fine Art
● アフタースクール
先生からの薦めでWatts Atelier of Arts に通う。
「筋肉だけ」「手だけ」「表情だけ」といった基礎を一年半学ぶ。
大学入試の際必要なポートフォリオ作りもここで手伝ってもらう。
● その他 スケッチをする、アートヒストリーを学ぶ、時代背景、社会がそのアーティストに及ぼした影響などを学ぶことも大切。
時間があれば、美術館に通い、素晴らしい作品に触れる必要あり。
2. 大学進学
1)UC 大学側が欲しがる作風が全く違う。
UCSB 古典
UCLA 現代アート
エッセイの内容も吟味される。
2)私立
マックスキャリアのサイトにある学校の一覧は参考になる。
その中でも特に有名なのは、
Cal Arts 月謝が高く年間4~6万ドルもする
Otis College of Art and Design ハリウッドに近いので映画関係のクラスもある
Art Center 車のデザインが有名、レベルが高く企業からも高く評価されている。ディズニーに入社する人が多い。
California Institute of Art サンフランシスコにある
Laguna College of Art 比較的新しい
☆ National Portfolio Dayで自分の作品を大学側に見てもらうことができる。毎年1月ごろ。
3)コミュニティーカレッジ
Mesa College はアートのクラスが多い
Mira Costa は少ない
4)日本の美大
確かに上手だが、同じような作風で、個性的なものがない。
工業デザイン、コンピューターグラッフィクの分野において長けている。
3.大学卒業後の進路
アメリカでは、総合大学でアート以外にも色々勉強するので、キャリアの可能性が広い。
● 工業デザイン
● 建築
● パッケージ
● 舞台芸術
● コンピューターグラフィックス
● 小売業 (たとえば、モールにあるおしゃれな小物と洋服の店Anthropologieは、店全体をアートの作品で埋め尽くす戦略で、高級路線をアピールすることに成功。)
日本人のバックグラウンドがある場合、和の要素も加えることもできる。染色、手すき和紙、浮世絵など、可能性が広がる
ただし、MANGAで食べていくには、マーケットが小さい、売り込みに時間がかかるといった理由で、難しい。
デジタルアートは支流なので フォトショップなどを使いこなせると更に広い分野において活躍できる。
4.筆者の感想
講師の方が、お子さんの高校時代から現在に至るまでの作品(絵画、版画、陶芸、等)をたくさん持って来て見せてくださいました。実際に手で触れてもいいと許可してくださったので、参加者一同、間近で作品を見て、感じることができました。
作品を通じて「私たちが住んでいる世界は実はこんなに美しかったんだ」、「人間って優しく暖かい心を持っているんだ」、「生きているって素晴らしい」というメッセージが伝わってきました。
高校時代に制作されたという細い線で描かれたペン画は、「いったいこれを仕上げるには何十時間かかったんだろう」と、ため息が出ました。他にも難しいアカデミックな科目をたくさん取って、良い成績を修めていらっしゃったので、その準備も大変だったでしょうに、たった一枚の作品にこれだけの情熱が注げるのはすごいと思いました。お母さんは、「娘は、絵を描いている時は、楽しくて時間を忘れるのよ。」とおっしゃっていました。
この数年で、画風が変わり、着実に力がついていることを、作品を通して見せていただきました。自分が好きな道を選んで学べることの喜びを、作品の一つ一つから感じることができます。
今では、紙も手すき、油絵のキャンバスも手作りされるほど、こだわっていらっしゃるそうです。確かに、紙によって、版画でも表情がまったく違ってくることを初めて知りました。
現在、大学で好きなアートを生き生きと学んでいらっしゃることを、「大人でも自分のやりたいことが見つからない人が多い中、娘は好きな道を歩めてうれしい。」とお母さんもとても誇りに思っていらっしゃいます。
このセミナーは、東北大震災の直後に行われたので、出席者全員が、アートによって傷ついた心が癒され、生きる希望を持つことができました。
景気低迷、先行きの不透明な時代だからこそ、私たちの心を奮い立たせ、良心を呼び覚ますアートの力が必要であることを学びました。
参加者は、「この絵には、こんな額縁を作ってもらって、家のあそこに飾りたいなあ!」などという、勝手な想像をして、わくわく盛り上がってしまいました。
生活にアートはなくても生きていけるけど、アートがあると心が深くなり、幸せな気持ちになれることを学びました。
このセミナーを通じて、子供がやりたいと見つけた道を親がサポートしてあげる大切さを学びました。
今後、引き続いて、お嬢さんのアートのキャリアのアップデートをしてくださるそうです。とても楽しみです。
これからも、どうぞよろしくお願いします。