ページビューの合計

2011/05/19

リストラ警察犬ホッキー


我が家の右隣に住むティムさんは、警察官で警察犬とパートナーを組んでパトロールをしています。

ティムさんは犬を3匹飼っています。そのうち2匹は警察犬としてのキャリアがあります。

9歳のホッキーは、ドイツ生まれのジャーマンシェファードで、警察犬になるために子犬の頃アメリカに移民してきました。ティムさんは、ロサンゼルス空港まで出迎えに行きました。

それから6年、ティムさんはホッキーが立派な警察犬になるために、日夜努力してきました。パートナーとしてサンディエゴで一番危険な地域にもパトロールにでかけていました。

ホッキーは自分は特別な存在なので、近所の住民などには見向きもせずに、私が声をかけようものなら、「怪しい! 逮捕してやる。」と言わんばかりに、大声でうなり声をたてていました。

「警察犬は、ハンドラー(ティムさん)以外には、心を開いてはいけない」と厳しく訓練されているそうです。

ところが、ホッキーには決定的な弱みがありました。どんなに訓練しても拳銃の音を聞くとひるんでしまうのです。ティムさんは、なんとかこの欠点を克服するために、手をつくしましたが、結局ホッキーは慣れることができませんでした。

そうこうする内に、財政難のあおりでリストラにあった若くて勇気のある警察犬ガナーがティムさんの警察署に無料でもらわれてきたので、ホッキーはあえなく早期退職に追い込まれてしまいました。本来なら9歳まで働けたのに、6歳で解雇になり、気の毒に思ったティムさんが家庭犬として引き取ってくれました。

それからは、ホッキーにとって茨の道でした。ついこの間まで自分がパトロールのために乗っていた車にガナーが意気揚々とティムさんのパートナーとして乗り込み、颯爽と出かけている姿をホッキーはニガニガしく見ていました。

家庭犬として以前からこの家にいたベイリーは愛らしく、色々な芸をして家族みんなから好かれていましたが、いまさらホッキーが同じポジショニングを狙うには無理があります。

最近まで警察犬として人間に歯を剥いて威嚇していたのに、リストラにあったからと言って、いまさら「お手」などするのは、プライドが許すはずがありません。

仕方がないので、自分で勝手に「ご近所の保安官」としての役割を見出し、歩道を歩く人、宅配便の人、狸、鳥、小動物全般、すべてに大声で吠えて、コミュニティーきっての鼻つまみ者になってしまいました。

夜中に猫が歩いても大騒ぎするので、睡眠妨害として町内会からもクレームが何度も出ていました。町内会の規定で、迷惑な犬は飼ってはいけないことになっているので、ホッキーはいつ放り出されてもおかしくない状況でした。

私も息子も犬が大好きなので、ホッキーの窮状に胸を痛め、ハンドラーのティムさんと「近所の人と仲良くするプロジェクト」を始めました。

まずは、ティムさんがホッキーをしっかり押さえて、私と息子が少しずつ近づき、「あの人たちはいい人だよ。私の友達だよ。」と教えます。

数ヶ月うちに、歯を剥いて吠えるということがなくなり、3人で雑談をしていても、ホッキーは警戒しなくなり、だんだん私たちの輪の中でリラックスするようになりました。

半年前からは、私や息子が近づくと、喜んでひっくり返り、お腹を見せるようになりました。なでてやるととても喜びます。

近所の人の顔も覚え、その人たちとその人たちが乗る車に対しては、吠えることがなくなりました。

この頃は、私の友人たちを紹介し、「この人は私のお友達だから、今度来る時には、ナイスにしていようね。」と教えると、覚えていて、次回は吠えずにいます。

今ではホッキーは大変柔和な顔をしています。体や顔にポツポツと白髪が混じるようになったので、年齢のせいかもしれません。

「マムは、ホッキーに対しては忍耐強くて、親切なのに、どうして僕にはガミガミと意地悪なんだろうね。」と息子に指摘されてしまいました。鋭い!!!





0 件のコメント:

コメントを投稿